犬にしてくれ

卑屈の森からリア充を目指して右往左往する様を克明に

映画「バクマン。」を観て考えた、血反吐を吐いてまでやりたいことってなんだろう?

週刊少年ジャンプで連載されていたマンガ「バクマン。」の実写映画が公開されていますね。

ずば抜けた画力を持つサイコ―と学年トップの成績で文章力に長けたシュージン。高校生2人組が漫画家となり、日本の少年誌のトップ、週刊少年ジャンプで頂点を目指すストーリー。ネームから原稿に仕上がるまでのマンガの制作の流れや、編集部の体制・アンケート絶対主義などジャンプの原理を客観的に解説し、もちろんそれはわたしたちにわかりやすくデフォルメされた現実ではありましたが、夢を売るマンガ雑誌でこんなに現実をぶっちゃけていいの!?という興奮があったことを覚えています。
今思うと、「ジャンプで一番のマンガ家になったら、自分の指定するマンガを一作終わらせる権利をもらう」をはじめ、現実ではありえない展開の目白押しだったのですが、週刊少年ジャンプの編集部というリアルな設定の素地があったからこそ楽しめた。連載時には作中で連載されたマンガが実際のジャンプの読み切りに掲載されるという試みもありました。マンガがこちら側の世界に来たのか、はたまたわたしがバクマン。の世界に入ったのか、夢現を行き来できる感覚が魅力だったのだと思います。

 

さて、中2からジャンプ立ち読みデビューをしてから早15年(!)今も現役のジャンプっ子であるわたしは喜び勇んで観に行きました。

 

開始から30秒、めくるめくジャンプの紹介に心を鷲掴みにされてからはずっと冒険のドキドキ感を味わいながら観ていましたが、実写にするとよりマンガ家の過酷さが見えてきます。特にペンの描きづらさ!一枚を仕上げるのがあんなに大変だなんて。以前羽海野チカさんの原画展に行った際に、芸術に疎いわたしでさえ絵から迫力を感じて驚きましたが、映画を観て納得しました。こんな繊細な絵をクオリティを保った状態で大量に描いてたら、そりゃあ体調崩すよな。マンガ家さんに腰痛持ちが多いのも頷けます。
それに毎週締切が降ってくるストレスときたら…。わたしは広告の制作会社に勤めていますが、締切とは本当にストレスの素。「まだですか?」と催促がきては、こっちだって急いでるんだよ!と逆ギレしながらもそれを飲み込み、ため息の毎日です。それが毎週、全ての責任が自分にのしかかる状況で、もし間に合わなければ…ジャンプの発行部数を想像したら恐怖で動けなくなってしまいそうです。

 

あと、わたしも仕事で血尿が出たり、肝炎になり入院した経験があるので、サイコ―の入院シーンは超あるあるでした。γGTPやらGOPやら、数値上がるよねー!笑 ただ違うのはわたしは「休めてラッキー☆」という気持ちで入院生活をエンジョイしていたのに対し、シュージンもサイコ―も無理を承知でそれでも働いていたことです。社会人になると自己管理も仕事のうち、という理屈がわかってくるので共感はできませんが、命を削ってでもやりたいことがある、というのはとてもまぶしく思えます。
仕事とは本当にしょうもないことの連続です。小さなものの積み重ねで大きなものが出来上がると頭ではわかっていても、毎日現状にため息をついていると、もともと自分がなにをしたくて働いているのか、この会社に入ったのかがわからなくなってしまいます。金銭的には安定している現状を捨てれば、もしかしたらやりがいのある新しい仕事に出会えるのかもしれませんが、それで失うものを考えると、わたしは飛び込み台から下を見ては煮え切らない態度でぐずぐずしています。

 

どうせなら命を削れるほどのものに出会いたい。
でも、一生そうやって戦っていけるのか?
対岸の熱気を感じながら、安定した土地でわたしは向こう側の景色を見ています。
まだ踏み切ることができません。

 

最後の最後、エンドロールを観たときに、これはわたしが踏み出せない先にあるもの、命を削って戦うことを選んだ人が作った景色だと思いました。本当に鳥肌が立った。

いろいろなネットでネタバレされてしまっていますが、過去のジャンプコミックスの名作の数々をオマージュしたエンドロール、圧巻です。ジャンプが好きな人なら、映画を観た人なら、みんなエンドロールに入った瞬間、一つのギミックも見逃さないように具に観察するでしょう。そしてそれほど人の心を掴むものは、やはり作り込まれたもので、作り手の想いが込められたもので、相当の覚悟がないと作り上げることは不可能です。ただただ、眩しかった。

 

 

もっと観たかったなあ。原作が20巻あるので前後篇にしてくれてもいいくらい。カヤちゃんがいなかったのが個人的に非常に残念でした。
でも「配役が逆」の前評判を覆すキャスティングはさすがでした。特にシュージン!勝手にシュージンのほうが背が高いイメージだったので、そこだけ違和感がありましたが、もうそのものです。
エイジもすごかったなぁ。「コングラッチュレーションですー」のセリフをああも違和感なく言いこなす染谷くん、さすがです。エイジは恋愛ものが苦手なはずなのに、染谷くんがあれで既婚者だなんて誰が信じましょう…

 

連載時にはなかったLINEがあったり(亜豆は自分の写真をアイコンにはしない気がするけど…)今の物語としてすんなり観られます。マンガを描くシーンはスピード感があって、エイジと凌ぎを削るバトルシーンはいまの映像の技術力がモリモリ詰め込まれていて、マンガ未読の人も楽しめます。

マンガ原作はとかく賛否が分かれがちですが、原作ファンも未読の人も、お仕事している人も夢を追っている人も、どこかしらにぐっとくるポイントが散りばめられていると思います。