社会的なパグ

フェミニストなのに広告会社にいる。迷いながら生きています。

マンガがわたしたちに与えるジェンダー観

中学生くらいから週刊少年ジャンプ読者でした。
暗殺教室が終わって毎週購読は卒業したけど、それまではほぼずーっと読んでたし、中高生の頃は腐女子だったので誰かしらのキャラに恋していました。

特に好きだったのはホイッスル!銀魂
ホイッスル!ではシゲさんがすきだし銀魂では沖田がすきでした。
(話が逸れますがシゲさんも沖田も7月8日生まれで、なのでわたしはいつか7月8日生まれの男性と運命的に出会うのだろうと思っていたけど、夫は9月生まれだった…w)

銀魂は最近まで連載されていたのでコミックスではずっと追っていたし、映画もまだまだやってくれるみたいなので楽しみにしています。

で。そんな銀魂っ子のわたしが、今になって「あれ?」と思うキャラクターがいます。
それが武市変平太。

彼は所属する鬼兵隊の策略家(頭脳担当)で、頭が切れるのにロリコン、みたいな、本人は冷静なんだけどロリコンなもんだからその冷静さがキモい、みたいなキャラ付け。
アニメでもちょっと癖のある声(目暮警部と同じ人)、実写映画だと佐藤二朗さんが演じていました。
そして、その彼のキメ台詞(?)がロリコンじゃない、フェミニストです」というものでした。

若い女の子にうつつを抜かして「ロリコンも大概にしろ」と言われ、「ロリコンじゃない、フェミニストです」と返すのが鉄板のやりとり。
さらに「敵とは言え女性には優しく接するのがフェミ道というもの」とも説明していました。

あってるっちゃあってるんだけど…

改めて「フェミニスト」を検索してみたところ
 ①女性解放論者。女権拡張論者。
 ②女性を大切に扱う男性。
という2つが出てきます。

この文脈だと、「女性に優しく接する」という意味でフェミニストという単語を使っているので、誤用かと思いきや一応あってる…
いやでも②の用法で使ってる人ってどんだけいるんだ…

恐らくわたしが初めてこの回を読んだときは「ふーん、フェミニストってそんな意味なのね」という感じで軽く読み流していたと記憶しています。当時大学1年くらいかな…
そこから紆余曲折あってフェミニズムに目覚め、「今になって思うとなんか違くない?」と気付くに至ったわけだけど、ただずっと記憶に残っているセリフではあったのでなにかしら引っかかってはいたのかもしれない。

ここで問題にしたいのは、これを読んで「フェミニスト=女性を優しくする。以上!」と理解してそのまま生きてしまっている人がたくさんいるかもしれないということ。
(別にそれで女性に優しくなる人がいるならそれはそれでいいんだけど)
多分、フェミニストの主な意味って①の方で、②は「そういう時に使われることもある」くらいの差があると思うんです。

こういうときはなにが適切なんだろう?
「紳士」「ジェントルマン」は礼儀正しいということだけれども「女性に優しい」要素は含まれていない。
「レディーファースト」が近いのかな?と思うけど、調べてみたらそれが「女性を優先する」という言葉に転じたのは最近のことで、もともとは逆の意味だったらしい。
もしくは、「ロリコンじゃない、フェミニストです」というセリフに対して、「フェミニストってそういう意味だっけ?」とツッコミを入れる、といったやり方もできたかもしれません。

週刊少年ジャンプ編集部と言えば、日本でも有数の高学歴かつ地頭もいい優秀な男たちの精鋭なのかと思っていたんだけど、どういう経緯で掲載に至ったのかも気になります。
こういうのは石原さとみみたいな校閲担当者が「間違いではないが、あまりメジャーな言葉ではない」など指摘してくれるものじゃないのかな?間違いではない言葉は指摘されないのでしょうか。
それとも用法としてメジャーではないことは理解したうえで、「フェミニストの方が語感がいい」などの理由でフェミニストのママイキにしたのか?

武市変平太が登場した紅桜篇が収録されているコミックスは11~12巻で、発売年で言うと2006年。今から14年前なので、その時には誰も気に留めなかったのかもしれません。
でもその後紅桜篇は人気過ぎて(わたしも大好きです)2010年にリメイクしたアニメ映画、2017年には実写映画が公開されています。「フェミニスト」のくだりもばっちり使われている。
両方の映画を観ていたにも関わらず、最近になってもやっとしてきたわたしが言うのもなんですが、2017年くらいにはどこかの校閲部の人に気付いてほしかったな~という気持ちもあります。

これは厳密に言うと間違っていない事例なのだけど、こうしてマンガがわたしたちに与える影響が大きいことを身をもって知っているからこそ、マンガには清く正しくあってほしいなと思ってしまうんです。