社会的なパグ

フェミニストなのに広告会社にいる。迷いながら生きています。

IPPONグランプリから考えたメディアの茶化し方

わたしはCreepy nutsのラジオリスナーなのですが
先日のオールナイトニッポン0にて、IPPONグランプリのゲスト観覧者として出演した時のエピソードを面白おかしく話していました。

要約するとこんな感じ▼
Creepy nutsIPPONグランプリに観覧者として出演。
・(番組内では観覧者にも大喜利を振るというテンプレがあるため)事前の打合せでスタッフから、もしかしたら二人にも大喜利を振られる可能性がある旨を伝えられるも、松永さんが全力で拒否。
大喜利が嫌な理由として、「芸人さんたちが命削って大喜利しているいわば聖域に、(お笑いに関しては)素人である自分たちが足を突っ込んで邪魔をするのは失礼である」という旨を松永さんが説明。Rさんも大いに頷く。
・スタッフさんからは特に反論が無かったにも関わらず、本番でRさんに大喜利を振られ、Rさんが失望する。

その後、Rさんが応えるもダダすべりして、どんなに心が傷ついたかを面白おかしく話してエピソードトークは終わるのですが、わたしはこのラジオを笑いながら聴きながらも、どこかにもやっとしたものも感じていました。

その感覚がハッキリ言語化できたのがOA後。
結果としてRさんのダダすべりはカットされ「Rさんカット」というワードがtwitterのトレンド入りすることとなりました。

IPPONグランプリのスタッフさんが、「Rさんカット」がトレンド入りしていることに気付き、遅まきながらラジオを聴き、Rさんのダダすべりを心待ちにしていたリスナーがたくさんいたことを知る。そして「Rさんカットすみませんでした」とtwitter上で謝っていたのですが、それを見た時に「いやそもそもRさんにネタフリしたことに対して謝りなよ…」という気持ちになったんです。

別にこれ自体はおもしろエピソードとして昇華されたのかなと思うのですが、ここに「誰かの真剣な想いを茶化す」というメディアの良くない点が見て取れるように感じました。

(もちろんラジオなので、少し盛って喋っていると思うのですが)話を聞く限りでは二人は大喜利をやりたくないことをはっきりと主張し、やりたくない理由を明確に伝えています。
それに対してスタッフは大した反論もせず打合せを終えたため、二人は自分たちの意思が伝わったと感じたはずです。にも関わらず、スタッフはRさんに大喜利を振った。

なぜそのような事態になったのか?
前述のように二人はしっかりと自分の意見を主張しているので「嫌と言ってくれなきゃわからない」「なぜ嫌だかがわからない」ということはあり得ません。
「なんだかんだ言ってたけど本番ではやってくれるだろう」「本番でネタを振ってしまえば断れないだろう」というスタッフの気持ちが想像できるような気がします(これはわたしの想像ですが、そんなにズレてないと思います)。
実際、Rさんは「あの場で断るのは勇気がいる(だから断れなかった)」とも話しています。

相手の話を聞いているフリだけして、実際には意に関せず自分の都合に合わせていくというのは、相手のことを人としてではなく、ある種コマのように考えている。平たく言うと相手をナメています。
さらに厳密に言うと、この”相手”というのは「自分より下の(だとその人が思っている)相手」ということで、この場合で言うとスタッフ(キャスティングする側)が出演者(選ばれる側。しかも若手)を下に見て、ナメてもいい相手だと思っている。
実際はご本人はそんなに性格の悪い人ではないでしょうが、無意識にそういう前提で動いているところがあるんじゃないかな?と思います。

本来であればそこに上下の関係は発生しないはずなのですが、ことメディア業界においては、動くお金が大きいせいなのか、世間に与える影響が大きいからなのか…そのような勘違いが非常に多い気がします。
そして「そっちの方が面白いから」「そういうものだから」というよくわからない理由が横行して、「作り手の意思を優先して出演者の気持ちを蔑ろにする事象」がなんの問題視もされないままに今日まで至っているように感じます。

少し前に箕輪編集者のセクハラLINEが話題になりましたが(それを引き合いに出すのも失礼な話なのですが…)力を持っている側は持っていない側に対して、その関係性にあまりにも無自覚です。
これまで「嫌なものは嫌だ」と表明すると「KY(空気が読めない)」と揶揄されることもありましたが、ここ数年でそのような主張を良しとする空気にようやくなってきました。松永さんが主張したのだって、本当は言いづらいだろうによく言ってくれたなと思うし、自分も見習わないと…と思います。
なので力を持っている(とされる)側も、相手に対しての想像力を持ちながら、仕事をしてほしいな…と思った次第です。


※最後に、この投稿はわたしが個人的にラジオを聴いてもやっとした気持ちを紐解いたもので、「フジテレビに抗議します!」みたいな気持ちは毛頭ありません。ラジオも面白かったし。
ただ、わたしが日頃からもやっていたメディアの問題点が垣間見えたような気がしたので、IPPONグランプリを通じて考えてみました、というだけの話です。