社会的なパグ

フェミニストなのに広告会社にいる。迷いながら生きています。

アイドルの女子力問題

わたしはももクロをはじめとするスターダスト所属の女性アイドル(通称スタプラ)がすきでよく応援しています。
なぜももクロがすきかと言えば理由はいろいろ挙げられますが、突き詰めて考えるとアイドルとしての姿勢がとてもかっこいい、ということに尽きるのかなと思います。
ももクロは「みんなに笑顔を届ける」ことを目標に活動しているグループです。エンタメ業界で働く人間として、シンプルだけどこれ以上ない信念だと思います。
コロナの状況にあっても、いち早く「家にいろTV」を開始。定期的にみんなで楽しそうな様子を配信してくれました。集まっての収録が難しくなってからも過去のライブ映像を配信したり、Youtuberのような企画動画を配信して、わたしたちの”おうち時間”を豊かにしてくれました。先日は無観客ライブを実施し、ファンのzoom参加も導入するなど、「いまの状況でなにができるのか?」を考え抜いて、その状況下でのベストを尽くしてくださいます。ほんとうにファンでいることが誇らしい。


前置きが長くなってしまったのですが、そんなももクロでさえ、まだ「女子力」に縛られていて、4人のトークを楽しく聞きながらもふと立ち止まることがあります。
最近はメンバー自身もおうち時間を楽しむ中で、れにちゃんが「毎日料理をして女子力を上げている」という話をしていました。料理の腕が上がるのはとてもいいことだし、れにちゃんのご両親はとても嬉しいことでしょう。
でも、「料理ができる=女子力」という前提での会話には大いに疑問を抱きます。

一般的に「女子力」とは料理ができるなど「家庭的」と同義語として使われたり、メイクや髪型、服装などに気を遣って「外見をかわいくあろうとする」能力を指して使われているかと思います。
もうこんなこと今更言うのも野暮だけど、家事能力が高いのも、かわいくあろうと日頃の鍛錬を怠らないのもとても良いことなのですが、それが「女子として当然期待されるべき能力」だと定義されてしまうのは良くない。それは完全に男性社会が生み出した男性に都合のいい定義づけです。

女性アイドルのファンの比率は男性の方が多いです。ももクロは割と半々で男:女=6:4くらいだけど、AKBのライブに行くともう少し男性の割合が多いことを感じる。
そうするとまあ「アイドルなんだから女子力は高くあるべし」と圧力がかかってくることもあるでしょう。最近では色んな子がいるので、敢えてサバサバした路線でキャラを立てていく子も多いですが、それも「アイドル=女子力が高いもの」という前提のもとで「アイドルらしくない性格」を売りにしているということになります。
(以下「アイドル」は全て「女性アイドル」のことを指します)

ももクロはまさにそうで、その当時AKBが天下を獲っていたアイドル業界で、そこからどう差別化をつけていくか?という試行錯誤の中で、独自の路線を進んでいくことになります。プロレスからインスピレーションを受けた演出は「アイドルらしくない」からこそ、既存のアイドルファン層以外からも面白がられ人気を得ることができました。

ももクロちゃん自身も、「女子力」を期待されるような売られ方をしていないことは自覚していると思います。初めの頃は「他のアイドルのようにかわいい衣装を着たい」と不満があった、という話もしていて、そこにコンプレックスがあったかもしれない。
しかしそのお陰で、ももクロちゃんたちは「わたしたち女子力無い~アハハハ!」と言いやすい環境にあったかと思います(往々にして力まずに「女子力」を発揮できる女性の方が少ないと思いますが…)。しかしその方が本人たちの心の健康にもいいし、それを見てついてくるファンはももクロに「女子力」以外の魅力を感じてついてきているわけで、健全な関係だなと思ったりもします。

活動開始時点ではももクロは「邪道」であり「イロモノ」だったかもしれません。でもそこから10年ほどの活動を通じて、ももクロは自身が「アイドル」であるという揺るぎない事実を作りました。わたしの「アイドル」の定義を広げてくれ、その「アイドル」のど真ん中にももクロが鎮座しています。
それまでわたしは「可愛い女の子がソロまたはグループで歌って踊る”職業形態”」をアイドルだと思っていたのですが、「歌や踊りに関わらず、様々な活動を通じてみんなに笑顔を届ける”存在”」がアイドルなのだと理解しました。ライブのできないコロナ禍でも、あらゆる手段で笑顔を届けてくれるももクロはアイドルそのものです。


そして、これはいちモノノフの勝手で過度な期待なのですが、そんなアイドルの枠を広げてくれたももクロには「女子力」なんて狭い枠に収まって欲しくないんです。もうほんと、勝手に言ってるだけだけど、”女性として”魅力的な人を目指すのではなく、普通に魅力的な人間になってほしい。いやもうなってるし、みんなものすごく綺麗なんだけど。「女子力上がった」と話しているのを見ると、「そんな力はあなたたちの人生には全く必要ないんだよ!」と叫びたくなる。「女性として」という枕詞を取っ払って、メイクや料理を楽しんでほしいんです。

彼女たちが働くメディア業界はジェンダー観がもう本当に本当に古くて、そんな中で「女子力」に囚われずに過ごすというのはなかなか大変だということもわかっています。本人たちがそう思っていなくても、無理解なメディアからそのような振る舞いを求められることも多いでしょう。
でもももクロは、環境に応じて柔軟に考え方を変えることができるチームです。「今までのような形でライブをすることは当分できない」と言い切り、新しい道を模索していたように、「女子力」なんて必要ない、ということを、ももクロだからこそ、考えてみてほしいな、と(ほんとうに一方的に勝手ながら)思ったりしています。

ももクロに対して想いが強すぎて言いたいことがうまくまとまらなかったな…)