バラエティの権力構造が受け付けない
よく見るタイプのバラエティのコーナーに「裏にいる芸人Aが芸人Bに指示を飛ばし、芸人Bがハチャメチャな動きをさせられるのを笑う」というものがある。最近これがどんどん笑えなくなって、受け付けなくなってしまった。
毎週見ているようなバラエティでもこういうコーナーの回だとわかると途中で消してしまう。
自分の中でなにが変わったのだろう?とよく考えると、番組の後ろにいる「無自覚な権力者」が見えてくるからだと気づいた。
裏で指示を出す芸人Aは表にいる芸人Bより先輩であり、芸人Bは芸人Aの言いなりになっている。
そして芸人Bがハチャメチャをやらかす相手はさらにそれより若く世間を知らない女性タレントである(だいたい売り出し中の女性タレントか、もしくは出たての超若手芸人が多い)(気がする)。
芸能界の権力構造で言うと明らかに芸人A>芸人B>女性タレントとなっている。
番組ではその女性タレントが、なにか変だと思うものの言い出せずに戸惑う、というリアクションも込みで笑うような仕立てになっているんだけど、笑えない。
目の前で挙動不審な行いをする人に戸惑う姿を前に、どう笑えばいいというのか。
番組内でも笑っているのは芸人Aの立場の人だけだ。視聴者は芸人Aのポジションに自分を置いて、芸人Bの予測不能な動きや、それに翻弄される女性タレントの戸惑いを見て笑っている。一方で芸人Bや、女性タレントの立場に立ったらどうだろうか。
男性だからという理由で、上司からおどけた姿を求められる若手社員や、若い女性だからという理由で「ピュア」さを求められる女性社員。番組を見るたびに、わたしは職場でよく見る彼らの姿を重ねてしまう。
ある番組では、女性タレントが「ネタバラシされた後に、ほっとして思わず泣いてしまった」ということをSNSに綴っていた。
また違う番組では、芸人Bに振り回される女性アナウンサーが堪え切れずに放送中に涙を流していた。
権力が上の立場の者が下位の人間を追い詰めることの何が面白いのか。
最終的に「冗談だったから」とネタバラシすれば何をしてもいいのか。
芸人Bが「こんなことしたくない」と反抗したり、女性タレントが「おかしくないですか?」と指摘しない(できない)のは、彼らに権力がないから。
その構造を利用して、悪気無く無茶ぶりをさせているのは、ハラスメントと何ら変わらないのではないか。
この構成は「古き良き」バラエティの様式美としてずっと昔から存在する。
わたしだって小さい頃から見ていたし、番組制作側もきっとなんの疑問も抱いていないだろう。
こういう時によく言われるのは「昔は緩くて良かったのに」という言葉。
違う。「昔からだめだったことに、いまようやく気づいたり、声を上げられるようになった」が正しい。
テレビを作っているのも結局権力側の人だから気づかないのだろうか。
気づいているけれども「そういうもの」だと思っているのだろうか。
テレビマンをビンタして、「気づいて!!!」と声を張り上げたい、そんな気持ちを噛みしめている。
===6/5追記===
この前のゴッドタンの、いやな雰囲気にして若手をおたおたさせるのではなく、笑わせるというのはなんかアップデートしている感じがして心も沈まずに見ることができました。