社会的なパグ

フェミニストなのに広告会社にいる。迷いながら生きています。

【広告】ロリエ kosei-fulプロジェクト

■概要

ターゲット:生理がある女性
プロジェクトWEBサイトを展開。WEB記事タイアップ(SPUR)。オリジナルパッケージ商品の発売。

 



生理による症状は人それぞれだと頭ではわかっていても、女性であるがゆえに自分の症状に当てはめてしまって相手を理解できない時がある。それぞれの生理の症状を”個性”と捉えることができれば、お互いに助け合っていけるのではないか。
という考え方のもと、社内アンケート結果やセブンルールとコラボした動画を掲出したWEBサイトを立ち上げ啓蒙する。

f:id:isunoue:20200827120502p:plain

プロジェクトビジュアル(サイトより抜粋)

 

■炎上したポイント

①生理の症状を”個性”と捉えることへの警鐘

生理の症状は人それぞれ個体差がある、という大前提はありながらも、あまりに重い症状は病院に行くべきであり、「生理の症状を軽視してはならない」という認識が広まって久しい。にも関わらず、”個性”という言い方は症状の軽視を誘発させるような無責任な言い方なのではないか。
というか、体調不良を”個性”とか言われても…

 

②生理をポジティブに捉えようという一昔前の考え方

昔から生理用品のCMは「生理の日もハッピーに♡」という広告が多かったが、一方で実際には生理痛や貧血に悩まされる女性も多くハッピーとは程遠い現実がある。
近年では「ずっと出血しているのにハッピーでいられるわけがない」という声がSNSでも多くみられており、ようやく本音を言える時代が来たにもかかわらず、それに蓋をするような旧時代の考え方への反発があった。
 

③生理の辛さを女性のメンタルだけに負わせて解決させようとした

同じくメーカーのユニ・チャームが「#NoBagforme」と冠を掲げ生理のタブー視を無くそうと社会に働きかけたのに対し、花王はまずは女性同士の理解を深めようと啓発しており、二歩も三歩も遅れている。「生理くらいで」休みにくいのは男女ともに生理を軽視しているのが問題であり、その知識不足に男女は関係ない。

 

■どうすれば良かったのか?

大前提として花王社内の生理に対する感覚がかなり古いのではないかと推察する。
「男性に訴えかける前に女性同士の相互理解が必要」だと考え今回の施策に至ったというが、女性同士の相互理解、シスターフッドはあるところにはあるわけで、まずは自分たちの現状を客観的に把握することが必要だったのではないか。

もしかしたら世間一般では花王の状態は普通なのかもしれないけれど、WEB上に公開するからにはWEBでどんなことが話題になっているかくらいは調べるべきで、そうすれば「生理でもハッピー」な空気にうんざりしているSNS上の声と自分たちの乖離に気づけたかもしれない。

そのうえで、まずは生理のことをきちんと知ることが必要。仮に「女性同士で相互理解」するためにも生理の基礎知識がないとどうしようもない。「重い症状は病院に行くべきである」ということを前提に、そのうえで「重い人もいれば軽い人もいる」と訴求するべきだったのではないか。