社会的なパグ

フェミニストなのに広告会社にいる。迷いながら生きています。

「男だから」じゃなくて「こういう性格だから」で生きていきたい

お正月にNHKで放送された「あたらしいテレビ」を観ていたら、とあるコメンテーターが半沢直樹は女性が当たり前のように活躍している姿が描かれていて良かった」と発言していて、え~~~??っていう、ものすごく違和感があった。
わたしがあのドラマを見て思っていたのは「働いてる女出せよ!」だったので、真逆の意見…

 

上戸彩は典型的な転勤族の妻の専業主婦(しかも銀行マンの妻の会が激怖い)
井川遥は疲れたサラリーマン(男)を癒す飲み屋の女将さん(銀行員時代は秘書という男性上司をサポートする役割)
今田美桜はまだ新人で戦力にはなっていない社員
南野陽子はマジ謎の副社長(ちゃんと働いてるのか?不可解な描写しかなかった)
江口のりこは「お前はお飾りだ」と面と向かって言われる操り人形

江口のりこも最後には自分の意思を持って動いたけど、ラストもラストだし、あのドラマでちゃんと働いている人としてカウントできるのって西田尚美くらいじゃなかっただろうか…?
「とりあえず時代的に女性もキャスティングしとこう」という感じで、結局は男社会で終始話が展開していった印象だったんだけど…

この7年で大分世の中の空気が変わったので、当時のキャスティングが男社会を反映していたのは仕方ないとして(7年前のドラマの続編なので、ファーストシーズンから動かせないところがあるのは理解できる)。
例えば、セカンドシーズンからの登場人物である半沢直樹の部下を、賀来賢人ではなく栗山千明がやってたら。勢いのあるベンチャー社長の尾上松也の役を北川景子がやっていたら。それだけでも少しはアップデートされてる!って思えただろうけど。。(キャスティングはわたしの独断と偏見です)

※バリキャリ女性以外の生き方がダメということでは全くなく、あまりにも男社会の中でストーリーが展開されて、女性が添え物程度にしか出てこなかったことに違和感を持った、っていう話です。日本を元気にする意味でも女性がそれこそ当たり前に活躍して描かれていたら励まされたのにな。

 

昔のコンテンツがどんどん楽しめなくなっていく

お正月休みに漫画の「バクマン。」を読み返していたら、こっちもかなりの男社会っぷりだった(バクマンは半沢ファーストシーズンよりさらに前の2008年~2012年連載)。

中学生にして漫画家になる夢を親が認めた理由は「男にしかわからない」。過労がたたって倒れた時も「男だから」という理由でドクターストップを振り切って執筆を継続。一方で女性キャラも「女の子ってそういうもの」という発言をしていたり、いやそれは個人差…という気持ちが抑えられない。
ストーリーは面白いけど、こんなに「男のロマン」に陶酔した漫画だったっけ?と都度引っかかってしまった。

挙句の果てにはジャンプで恋愛漫画を連載する女性漫画家に対して「パンチラは男の夢だから必須」と熱弁を奮う編集者と漫画家…ジャンプ編集部が今でもこんな倫理観で漫画を掲載してるんだとしたらもう読みたくない…という気持ちにさせられる(でも今も大してアップデートされてないんだろうな。BURN THE WITCH、1話目しか読んでないけど「パンツ見せてくれ」ってしつこく食い下がってたもんな…ジャンプラもAVくずれみたいな漫画掲載してるしな…)。

でも当時は、普通に読んでたんだよな…現在進行形で連載されている漫画でも倫理観ヤバいなっていうのは多いけど、昔好きだったコンテンツが受け付けなくなってしまう現象が結構ある。

 

令和のキャラクターの描かれ方

一方、2020年の終わり、わたしは「この恋あたためますか」にめちゃくちゃハマった。
きっかけは東京03の飯塚さん(わたしはももクロのファンなので、親しみを込めて「サトシ」と呼んでいる)が出演することを知ったからなのだが、お陰で非常に楽しく冬のクールを過ごすことができました。

中村倫也演じる社長はかっこつけだし弱音を吐かない。常にクールに振舞い、人に頼ることもしない。しかしそれは「男だから」ではなく、彼自身の偏屈な性格によるものである。
一方で、主人公の同僚を演じる太賀は弱音を吐く。しかも女性である石橋静河に。なぜなら彼はオープンマインドなキャラクターとして描かれていて、同僚であり友だちである石橋静河とはお互いの恋愛の進捗を報告し合える気心の知れた間柄だからだ。

ここでは全て(当たり前のことだけど)「この登場人物はこういう性格だからこう動く」としてストーリーが展開されていく。「男だから」「女だから」というのはキャラクターが動く理由にはならない。

あまりドラマを観る方ではないので傾向はわからないが、ちょうどバクマンと恋あたを同時期に楽しんでいたので、ここ10年でのアップデートをクリアに感じることができた。

 

理想と現実を見た2021年お正月

さらに、こちらもお正月に放送されていた「逃げるは恥だが役に立つ」では、星野源演じる夫の描かれ方がこれまた素敵だった。
働きながらも、妊娠で動けない妻に代わり家事を一手に背負う。「さも当然」という顔で育休を取得しようとするが、上司からは嫌味を言われる。
新垣結衣演じる妻は同僚に愚痴ったり、職場の理解があったりと、自分の辛さを周囲に話せる環境にあるが、星野源は悩みを共有できる仲間もおらず、弱音を吐ける場所が無い。これは男性がこれまでずっと置かれていたリアルな環境だ。

劇中、星野源がずっとつらかった、と自分の胸中を吐露し涙する場面が個人的にはドラマのハイライトだった。
男だってもっと泣いていい。つらいのは男女ともに同じなのに、なぜ男性は泣かない(泣けない)のか。小さい頃から「男の子なんだから泣かないの!」と言われて育った人は決して少なくないと思う。その呪いを一朝一夕には解くことはできないが、星野源を観て一人でも多くの男性が呪いに気づくことができれば、と思う。

 

そう思った矢先、箱根駅伝のコーチが「男だろ!」「男になれ!」とめちゃくちゃな檄を飛ばして優勝していたのだった。。ショック!

勝たなきゃ男じゃないのだろうか?そうしたら、優勝していない大学のランナーさんたちは男じゃないのだろうか?女性アスリートが勝った時、彼は「それでこそ女だ!」と褒めるのだろうか?
その檄、ほんとうに効いてる?ほんとうに選手一人ひとりを見て言ってる?

 

理想を描いたドラマにウキウキしながらも現実に頬を叩かれた2021年の幕開け。
大丈夫、呪いを解くのは一歩ずつ進んでいる、と言い聞かせながら。